-釜石の被害を直視する-4月28日レポト              

寺田麻佑

 2011年8月執筆(以下はすべて2011年8月時点の事実です。)

1.炊き出しを一緒に行った釜石市役所廣田さんに釜石の状況を見せていただく

「今日は、車で回れる範囲ですから」「―やっこいもんをおみせすることになるかもしれませんが」

道路がなくていけないところで、もっと小さな集落でまわっていないところがありますが」

「釜石の被害はこんなもんじゃねえってことを、ちゃんと見ていただきたいんっす。釜石こっちこられて、この町だけご覧になってても、被害の実情、わかりません。」

 とおっしゃる廣田さん(釜石市役所勤務)の運転で釜石、大槌、吉里吉里へと向かったのは4月28日午後のことであった。

炊き出しのお手伝いの合間に見せてくださった光景を元に以下レポートする。

 

①釜石湾

 まず、釜石の「戦艦大和」をみる。こんな大きな船が津波のために動き、引き潮で戻され、動いた場所の下にそのまま落ちたために写真のようになった。

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②防波堤

鈴木善行元首相が釜石出身だったためにできた湾口防波堤について―30年、1200億円―60メートルの水深で、海から6メートル出ている、それが、ずっと一つのリアス式海岸を結ぶ直線のようになっていたが、今は7割消えた。

津波が10メートルで、時速80キロメートル位、防波堤のために6分、津波の到着が遅れた[1]。これは、やはり大きい。防波堤があったことで助かった命がある。町のひとたちは、壊れてしまったけれどもスーパー防波堤があってよかったと実感したという。

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③吉里吉里―大船渡

 学校の窓に車が突き刺さっている。ここまで津波が来たという証拠である。

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④唐丹地区

 津波で小学校が完全に水没(今は水は引いている)。しかし、昔からの防災訓練のため、唐丹の小学校で亡くなった児童はいない。この地区は、いくつかの小さな湾があり、ひどい地区は建物、線路、駅(唐丹駅)等全滅している。

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以下はまだ全滅を免れている唐丹地区(なぜなら、高台のほうに住居があるから)。

しかし、被害は大きい。

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2.まとめ

陸前高田―釜石-大槌(気仙沼)、大きな被害があった地区の中でも、陸前高田は勿論ものすごい被害であるが、たとえば大槌町も、町民1万4千人の中、町長含め1千七百人が亡くなったのである(七百人程度遺体が見つかっていて、千人程行方不明)。本当に甚大な被害を受けたことが分かる。

釜石は、町全体がほぼ壊滅状態となった陸前高田に比べれば規模が違うともいえる。しかし、釜石の被害も計り知れないほど大きい。これからの復興をどのように進めていけばよいのか、話を聞けば聞くほど問題点が多いことが浮き彫りになった。以下意見を含めて紹介する。

 

○釜石市役所廣田さんの意見

これは、多くの被災自治体にいえることではあるが、「できるだけ国に負担をしてほしい」という気持ちは大きい。それは必要だし、当然国も負担するが、すべて負担できるわけではない。この点、自立ができるところまで-それ以上の支援はむしろ、炊き出しの例ではないが、「支援慣れ」して努力しないという結果を生み、悪循環に陥らせる可能性も秘める。しかし―その線引きは困難であり、必要な支援を削ることはできないため、現在はやはり、自治体=国また民間も完全に協力して、どちらの分担がどのくらい必要かなどにこだわらず、支援策を進めるべきである。人それぞれの自立のレベルは異なる。現在は、まずはライフラインの復興が大切である。

 

○ボランティア、支援に関する問題点

● 国、自治体の問題

ボランティアの活用には、限度がある。勿論、無償奉仕は大切だが、負担の大きすぎるボランティアという形ではなく、もう少し容易に手伝える形態を国、自治体は模索すべき。

● いつまで(炊き出しにしろ)支援を続けるかという問題

公園より海側の地域は、被災にあっていないと考えているが、実際に津波に遭わず、建物が無事な部分の地域の人たちが、「自分たちは被災者だ」と考えている。市役所の廣田さん曰く、「本来、支援が必要な人たちが、支援は必要ないと頑張っていて、自分たちで解決出来る人たちが被災者だという意識がすごく大きい。支援慣れしてもらっては困る」

 

○今後の対策、復興に関する大きな問題点

1)がれき処理

がれきの処理に50年かかるのではないか? 自衛隊だけでは手は回らない、50年以上かかると考えられる。がれきの撤去については、民間などが行うのか、考えていかねばならない。→自衛隊だけを使うわけにもいかないし、がれき処理は雇用を生む。

2)国の方針

早く国の方針を早く策定してほしい。地方は、何につけ、国の方針が決まらないと、動けない。

疑問は山のようにある。話し合うべきこともある。津波被害にあった地域に新たに家を建てることができるのか?建物を修理してつかってもいいのか?菅総理は、山を削って、高台に住めと言っているが、それははっきりいって、無理な話ではないか?等。        

 以上

[1]「世界最深・釜石の防波堤、津波浸水6分遅らせる」読売新聞201142日記事 

参考URL: http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110402-OYT1T00753.htm (20118月閲覧)

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